「礼儀正しい」と評判のゆるキャラ、市長も応援
全国のご当地キャラクターなど過去最多の約1700体が参戦し、人気を競った「ゆるキャラ®グランプリ(GP)2014」。
千葉県では成田市の観光キャラ「うなりくん」は19位に入り、4年連続で県内トップの座を守った。なぜ毎年挑戦し、どう人気を維持しているのか。ゆるキャラの緻密な“選挙戦略”を探ってみた。
「皆さんの力で、一つでも上に押し上げてください」。9月中旬、帰宅ラッシュのJR成田駅前で、マイクを握った小泉一成市長が、まるで自身の選挙戦のように声を張り上げた。傍らではうなりくんがポーズをとる。ゆるキャラ®GPでうなりくんへの投票を呼びかける応援演説だ。

【投票期間中、JR成田駅で市民らと触れ合ううなりくん(9月12日)】
うなりくんは9月2日~10月20日の投票期間に4回、駅前に立った。当初3回の予定が、中盤に君津市の「きみぴょん」に抜かれて危機感を強め、急きょ4回目を設定。市幹部ら約30人が投票方法の書かれたカードを配り、女子高校生らがその場で携帯電話から投票するなど、反応は上々だった。
どうして成田市はここまで力を入れるのか。うなりくんを全面的に支援する市観光プロモーション課の兼坂昌宏さん(29)は、「ゆるキャラは当たれば絶大な経済効果をもたらす」と話す。
前回優勝の「さのまる」の地元、栃木県佐野市では、優勝後の関連グッズの売り上げが2倍以上にアップ。テレビなどの出演依頼も増え、市の広告塔となっている。2011年優勝の熊本県の「くまモン」は、12年の関連商品の売上高が把握分だけで前年比約11倍の293億円に達した。同県の「営業部長」の肩書を持つことでも有名だ。

【うなりくんグッズは60種類以上。外国人観光客にも人気だ(11月8日、成田山新勝寺の表参道で)】
こうした効果を目の当たりにすれば、成田市が必死になって選挙戦を展開するのもうなずける。投票を呼びかけるポスター約500枚は、飲食店や駅など、「目にした人がその場で投票してみようと思える場所」(兼坂さん)へ重点的に貼り出した。掲示をお願いする際はうなりくんも同行し、「大票田」と位置づけた成田空港では大手航空会社を回って顔を売った。
若者向けにブログやツイッターを使ったインターネット戦術も駆使した。うなりくんも、印象に残るポーズやゆるキャラ界でブームというダンスに磨きをかけるため、日々鏡の前での研究も怠らなかったという。

【鏡の前でかわいらしいポーズを研究するうなりくん】
豊富な選挙戦の経験を持つ小泉市長は、うなりくんの戦いぶりについて「投票期間前からポスターを貼ってスタートダッシュに成功したほか、多くの人に直接会って名前と顔を知ってもらうという選挙の基本を徹底していた」と評した。
そんなうなりくんだが、今月1~3日に中部国際空港(愛知県)で行われた決選投票の会場に、参加資格があったものの姿は見られなかった。成田市に残り、地元の「サークルまつり」などに参加していた。
イベントシーズンのため出演依頼が多く、分単位で会場をはしごする過密スケジュール。カメラを向けられればすかさずポーズをとり、子どもには腰をかがめて対応。同市の会社員の女性(47)は「かわいさがありつつ、とても礼儀正しい」と絶賛した。
うなりくんは兼坂さんを通じ、こんなコメントをくれた。「いつもみんなに楽しんでもらえることを一番に考えているよ。これからも頑張ります。うな」。日頃の地道な活動が、票につながっているようだ。
2014年11月10日 (YOMIURI ONLINE)
千葉県では成田市の観光キャラ「うなりくん」は19位に入り、4年連続で県内トップの座を守った。なぜ毎年挑戦し、どう人気を維持しているのか。ゆるキャラの緻密な“選挙戦略”を探ってみた。
「皆さんの力で、一つでも上に押し上げてください」。9月中旬、帰宅ラッシュのJR成田駅前で、マイクを握った小泉一成市長が、まるで自身の選挙戦のように声を張り上げた。傍らではうなりくんがポーズをとる。ゆるキャラ®GPでうなりくんへの投票を呼びかける応援演説だ。

【投票期間中、JR成田駅で市民らと触れ合ううなりくん(9月12日)】
うなりくんは9月2日~10月20日の投票期間に4回、駅前に立った。当初3回の予定が、中盤に君津市の「きみぴょん」に抜かれて危機感を強め、急きょ4回目を設定。市幹部ら約30人が投票方法の書かれたカードを配り、女子高校生らがその場で携帯電話から投票するなど、反応は上々だった。
どうして成田市はここまで力を入れるのか。うなりくんを全面的に支援する市観光プロモーション課の兼坂昌宏さん(29)は、「ゆるキャラは当たれば絶大な経済効果をもたらす」と話す。
前回優勝の「さのまる」の地元、栃木県佐野市では、優勝後の関連グッズの売り上げが2倍以上にアップ。テレビなどの出演依頼も増え、市の広告塔となっている。2011年優勝の熊本県の「くまモン」は、12年の関連商品の売上高が把握分だけで前年比約11倍の293億円に達した。同県の「営業部長」の肩書を持つことでも有名だ。

【うなりくんグッズは60種類以上。外国人観光客にも人気だ(11月8日、成田山新勝寺の表参道で)】
こうした効果を目の当たりにすれば、成田市が必死になって選挙戦を展開するのもうなずける。投票を呼びかけるポスター約500枚は、飲食店や駅など、「目にした人がその場で投票してみようと思える場所」(兼坂さん)へ重点的に貼り出した。掲示をお願いする際はうなりくんも同行し、「大票田」と位置づけた成田空港では大手航空会社を回って顔を売った。
若者向けにブログやツイッターを使ったインターネット戦術も駆使した。うなりくんも、印象に残るポーズやゆるキャラ界でブームというダンスに磨きをかけるため、日々鏡の前での研究も怠らなかったという。

【鏡の前でかわいらしいポーズを研究するうなりくん】
豊富な選挙戦の経験を持つ小泉市長は、うなりくんの戦いぶりについて「投票期間前からポスターを貼ってスタートダッシュに成功したほか、多くの人に直接会って名前と顔を知ってもらうという選挙の基本を徹底していた」と評した。
そんなうなりくんだが、今月1~3日に中部国際空港(愛知県)で行われた決選投票の会場に、参加資格があったものの姿は見られなかった。成田市に残り、地元の「サークルまつり」などに参加していた。
イベントシーズンのため出演依頼が多く、分単位で会場をはしごする過密スケジュール。カメラを向けられればすかさずポーズをとり、子どもには腰をかがめて対応。同市の会社員の女性(47)は「かわいさがありつつ、とても礼儀正しい」と絶賛した。
うなりくんは兼坂さんを通じ、こんなコメントをくれた。「いつもみんなに楽しんでもらえることを一番に考えているよ。これからも頑張ります。うな」。日頃の地道な活動が、票につながっているようだ。
2014年11月10日 (YOMIURI ONLINE)