ゆるキャラが作るニッポンの元気

◆「ゆるキャラグランプリ2014」投票受け付け中!

 今や全国どこへ行っても、ゆるキャラに出会うことができる。地域を盛り上げるために日夜ゆる~く活動しているゆるキャラたちの年に一度の祭典「ゆるキャラグランプリ」のインターネット投票の受け付けが始まった。

 これまでグランプリに輝いたのは、くまモン、いまばりバリィさん、さのまるといったスターたち。アイドルグループのセンターも“総選挙”で選ぶ時代、今回のグランプリには史上最多の1696キャラクターが立候補し、混戦模様になっている。また、11月に愛知県の中部国際空港セントレア特設会場で行われる決選投票では、ネットではなくリアルの投票が導入され、投票を呼びかけるゆるキャラを前に、“有権者”が清き一票を投票箱に入れるといった光景が見られそうだ。話題満載の「ゆるキャラグランプリ2014」の見どころを実行委員会の西秀一郎会長(「ディスクベリー・ドット・コム」社長)に聞いた。


【今や熊本のシンボルとなったくまモン】



●日本のど真ん中でやってみよう…西秀一郎会長

 ――ゆるキャラグランプリ2014には史上最多の1696キャラクターが立候補するなど、非常に盛り上がっていますね。


 「ゆるキャラグランプリは、祇園祭でいうと八坂神社に向かう通りみたいなもので、ゆるキャラはひとつの山車なんです。そこにいい山車、悪い山車はないわけで、それぞれがお祭りを盛り上げ、町内会の結束を固めるんですね。だからゆるキャラグランプリが盛り上がっているかいないかは、それほど重要じゃなくて、目的は地域振興なのできっちりと地域に根付いてくれればいいと。今回は大通りに山車を持ってきてくれる人たちが1700近く出てきたと、ぼくは理解しています」

 ――リアルの投票を設けた理由は何ですか。

 「従来はインターネット投票だけでした。でも、やっていくうちに正確な数字が出ないんじゃないかというお叱り、ご批判もありまして、顔の見えない投票を減らそうということで、今回リアル投票を始めることにしました。表彰式は中部国際空港セントレアでやるんですが、愛知県には有利になるんじゃないでしょうか。やはり、地元開催が有利にならなくてどうするという思いもありますし。で、来年はうちの町に来てよっていう流れになればいいなあって思います」

 ――会場がセントレアに決まったいきさつは?

 「過去3回、埼玉の羽生でやってきたんですけど、オリンピックもワールドカップも世界あちこち持ち回りでやっていますし、本当の意味でゆるキャラが地方を活性化するには持ち回りにしようという構想は最初からありました。ウェブサイトで開催地を募集したところ、約60の立候補がございまして、その中から日本のど真ん中の愛知県でやってみようということになりました。北海道、沖縄といったところから飛行機で来た方にそのまま来ていただいてもいいですし、ゆるキャラが世界に旅立ってほしいという意味もあります。空港というだけでメッセージになると思うんですよ」
「ゆるさ」を否定しなくなった

 ――西さん自身、いつごろからゆるキャラと関わっているのですか。


【2012年のグランプリに輝いた「いまばりバリィさん」(中央)】



 「レコード会社にいた時、みうらじゅんさんと一緒にやらせていただいていたんですけど、1997年に始まった『勝手に観光協会』というプロジェクトがありました。みうらさんが旅をして、勝手にご当地を盛り上げ、マスコットキャラクターを作るプロジェクトなんですけど、その中でゆるキャラっていうひとつのブームが出来上がりました。昔はゆるキャラって言われた方はあまりいい気がしなくて、うちはゆるくありませんからっていうところが多かったんですけど、今は逆で、どうですゆるいでしょうって持ってきます」

 ――世の中が変わってきたということでしょうか。

 「昔、やべえと言ったら先生に見つかる寸前でしょ。今、やべえって言うとめちゃめちゃおいしいスイーツを食べている時に言うじゃないですか。昔の大人だったら怒りましたよ。でも今の大人って若者文化を絶対否定しないでしょ。だからゆるいっていう言葉もそのまま行っちゃっているんじゃないかって気がします」


●地域を知るきっかけに

 ――2012年以降、グランプリに関わってきた西さんにとって一番記憶に残るエピソードは何ですか。


【2013年、120万票余りを集めてグランプリに輝いた「さのまる」。ゆるキャラを見れば地域の名物がわかる】


 「くまモンは2010年、九州新幹線の熊本駅開業に合わせて誕生したんです。2011年3月12日に華々しく1歳の誕生日ってことだったんですけど、前日に震災がありまして、すべての歌舞音曲が自粛になり、ずーっと日陰の身だったんですね。それが2011年にグランプリをとり、そこからくまモンのストーリーが始まったんです。やっぱりグランプリの出発点はある種のカタルシスだと。それに、震災でみんなが感じたのは地域がひとつになる、コミットするということがやっぱり重要だということを実感したと思うんですよ、特に都市部じゃないところでは」

 ――地域がひとつになる時、ゆるキャラが果たせる役割は何でしょう。

 「一助になればいいと思っています。古くは氏子ですよ、今は東京マラソンでしょうか。ぼくは月島に住んでいるんですけど、意外と盛り上がったりするんですよ。何ともいえない人と人とのつながりには、ゆるキャラあたりが手ごろだと思うんですね。一生懸命やる必要もなくて、それでいてちょっと頭を使えば何かできあがってくるものなんです。あと、子どもが自分の町を知るいい機会になるんですよ。うちらの町では何が特産なのか、どんな形をしているのかとか、そういうものを知るきっかけになります。学校の先生に聞くと、今度うちの町でゆるキャラを作ることになり、それを授業にしたんですけど、こんなにいい授業はないですねって」

 ――これから投票しようかなと思っている人にどんなことを伝えたいですか。


【ゆるキャラが「日本各地を知るきっかけになれば」と語る西さん】


 「ぼくは働けてあと20年ぐらい。自分の余生を考える時、人生のクオリティーを上げたいって考えるんですけど、もうひとつは最終的にどこに住むか、行ったことがないところはどこかって考えるんですよ。おそらく50代の人で47都道府県全部行っていない人は結構多いと思うんですよ。ぜひ行っていただきたい。47都道府県全部回るぐらいの人生をこれからやっていただきたい。そのためにゆるキャラってガイドになると思うんですよ」


 ゆるキャラグランプリのインターネット投票は、(1)各端末から公式サイトにアクセス、(2)ID登録、(3)発行されたIDでログイン、(4)投票(1日1回)といった手順をふむ。詳しくはこちらで。ネット投票の締め切りは10月20日。

 ネット投票の上位100位までと「ゆるキャラグランプリinあいちセントレア」に出展しているキャラクターが、11月1日から3日にかけて中部国際空港セントレアで行われる決選投票・表彰式に臨む。


2014年9月29日(YOMIURI ONLINE)